田舎ぐらしは楽ではない。案外お金もかかる。そんなわたしの田舎ぐらしを紹介しながら、長期投資の必要性について触れたいと思います。
わたしは人口10万に満たない東北地方の田舎在住です。自宅は市内中心部から車で10分、 田んぼだらけの集落(むしろ村)に位置します(よくダーツの旅で出てくるようなあんな感じ) 近所のお宅は、ほぼ兼業農家を営んでおり、そうでないお宅でも大なり小なり自家菜園を持ち、自宅で野菜を作っています。
村には50世帯ほどが住んでおり、古くから皆が顔見知りで、親戚関係が多いです。誰かが亡くなれば、大半の村民が香典を持っていきます。ですから村内に不審な人がいたらすぐわかりますし、お向かいの女子大生に彼氏が迎えに来た際は、行きかう人々が「誰だ・・・?」と顔を見合わせるというドラマのようなことが本当にありました。家を留守にする時でも、数時間の外出であれば玄関に鍵はかけませんし、車のロックすらしないこともあります。留守中に親戚が訪れ、台所にお土産(だいたいが野菜や果物や釣った魚)を置いていくし、呑んで夜中に星を見ながら散歩しても、誰に会うこともなく、身の危険を感じたことは一度もありません。
車で15分も走れば海や山があるので、一年中何かしら海の幸山の幸にありつけます。タケノコ採れたから食べるか?鯛が釣れたから食べるか?メロン貰ったから食べるか?と、いただき物に舌鼓を打つこともしばしば。ミネラルウォーターを買うこともありません。空気と水・食べ物・酒は本当に美味しいです。他県からの赴任者は食の魅力に憑りつかれ、帰任してからも「あの味が忘れらない」とたびたびこの地を訪れます。春は山菜採り、夏は釣り、秋はきのこ・果物狩り、冬はスキー・・・などなど、リタイア世代が暇を持て余さずのんびり過ごすには愉しみの多いところで、近年では「シニアが住みたい市町村ランキング」入りを果たしました。
しかし良いことばかりではありません。自然豊かだということは人口が極小なことを示します。わたしの自宅からポストまでは徒歩20分、コンビニまで徒歩45分かかります。デリバリーが行ける範囲を超えているため、「デリバリーピザを注文」などということは、トレンディドラマでしかあり得ない むしろ未だ夢です。ウーバーイーツが使える日なんて来るのだろうか・・・。十数年前に気まぐれな住人が自動販売機を設置した際には、村民がこぞって見物に訪れ、即日飲み物が完売になるという冗談のようなことが起こりました。ローソンが中心部に開店し始めたのは5年前ぐらいからでしょうか。当時市民の間では「ローソンに行ったか?」が話題になったほどでした。
最近は核家族が増えているものの、私の近所はほぼ2世代・3世代の同居です。また、通勤や買い物・通院などを徒歩や公共交通機関で済ませることは不可能です。近くにバス停や駅がありますが、1時間に1本走っているかどうか・・・。初めて東京に行き、5分と待たずに次々電車が発着していくのを見た時は衝撃が走りました。ここは車がなければ生活ができません。働く世代の人は、一人1台車を所有するのが普通です。車の維持費は車検・保険・税金・ガソリン代・タイヤなどで1台30万円ほどかかりますから、家族4人の場合は年間120万円に上り、「わたしは車のために働いてるのか・・・?」と自問したくなることもあります。日本の自動車産業は、地方それも田舎住民が支えているのだと日々感じます。
住まいについては、結婚し子供が大きくなってくると住宅を構える世帯が8割を超えます。住宅は土地40坪、4LDKで2,500万円ぐらいです。ですから月7~9万の支払いで住宅を持つことが可能です。但し、ほとんどの人が20年超のローンを組みます。
一方収入の面では、ご想像の通り給与水準は低いです。サラリーマンの平均年収は400万円だそうですが、やはりそのぐらいが多いと感じます。物価は都市に比べ安いものの、上記の通り車や住宅の所有が生活コストを引き上げてしまっています。ですから、多世代同居をしながら共働きや兼業農家をして世帯収入を上げつつ、家族が協力して食費・光熱費・教育費を抑えるという田舎の知恵・風習の流れを踏襲している家庭が多いです。
こうして大家族が助け合って生活をしても、親の介護、車の維持費、住宅ローン、子供の教育費・・・など、将来に対するお金の不安は尽きることはありません。これは田舎のみならずどこでも同じでしょう。そんな不安を解決してくれる強力なアイテムが「じぶん年金」つまり長期投資なのだと思っています。
月3万円を30年間コツコツ積み立て、年利3%で運用できればおよそ1,700万円の資産が築けます。ただの貯金では1,000万円とちょっとしか貯まりませんから、複利の力を利用した長期投資がいかに効率の良い資産形成方法かということがお分かりになると思います。
ここでポイントとなるのが「年利3%」という部分です。1年間に資産価値を何パーセント増やすかというのが「年利」です。
上記の積立を年利1%で運用した場合は1,247万円です。つまり長期投資で最大限資産を増やすためには、年利をいかに高くするかがポイントになるわけです。年利を高くするには、景気が悪い時は債券などの安全な資産を多く持ち、景気が良い時は少しのリスクを取って株式の比率を多くするといった、資産の一部を売買し、時に守り・時に攻めるといった運用を行うことが必要なのです。
景気が良くなる・悪くなる、といった見通しを立てるためには、金融リテラシーつまり経済や金融の知識や経験を身に着けるしか方法はありません。
結論を言うと、じぶん年金を確実かつ効率よく形成するためには、①若いうちに自分の時間を幾分か使って、②正しい知識・経験を得て、③それをもとに自分の資産をどのように運用したらよいかを考える習慣 この3つが必要なのです。つまり、「自分の知識・経験もお金同様に時間をかけてコツコツと積み上げる」これが肝要です。
わたしは特に地方に住む若い世代の人たちが、揃って長期投資を始める社会になって欲しいと願っています。「ねえ、日本株インデックスと外国株式インデックスって、何パーセントずつにしてる?」「明日の雇用統計ってどうなると思う?」という会話が普通に交わされる社会になったらいいなと思います。
今はネットで株式も債券も買えますし、金融に関するニュースや知識も多くあります。将来のお金の心配が軽減されれば、自然豊かでのびのびとした地方暮らしは、今後より輝きを増してくるでしょう。地方に住みながら、金銭的な豊かさと自然がもたらす心の豊かさ、このどちらも獲得できるのがまさに長期投資なのだと信じてやみません。
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