今週は経済指標の改善から全体的にリスク選好度が高まり、株式は世界的に堅調に推移しました。米長期金利は一時1.63と6月以来の高値水準をつけるも、その後の一服感から金利感応度の高いテック系の買戻しが進みました。シンガポール市場はJPM・バンカメ、Wファーゴなどの金融銘柄が好決算を示したことで連れ高、日経は一段の円安を受けグローバル銘柄を中心に強く推移しました。

為替は円安が進行。クロス円が伸長し特にリスク選好度の高いキウイ・豪ドルは3%超を記録しました(2018年2月以来の水準) 原油をはじめ商品価格が上昇したことによりポンド・カナダドルも堅調、対してドルインデックスは心理的節目である94.5を一時超えるも達成感から一旦は押し戻し、週の後半は小動きに終始しました。

商品はインフレが加速。亜鉛は電力価格の高騰を背景に欧州の大手亜鉛メーカーが大幅な減産を打ち出したことで14年ぶりの高値、20%超の急騰となりました。同様に非鉄金属である銅もこれにならい約10%の上昇、天然ガスの供給難から原油への転換策も垣間見え天然ガスは弱含み、一方原油はOPECが世界需要予測を下方修正し一時は押し戻されたものの、サウジのエネルギー相が米国などの増産要請を拒否したと報じられたことで買い戻され、週を通じては2014年10月以来の高値となりました。ビットコインは700万円を超え史上最高値を更新しました。

来週の注目指標は下記の通りです。
10/18 (月) 中・GDP、鉱工業生産
10/19 (火) P&G・J&J・フィリップモリス・NETFLIX決算
10/20 (水) 米 地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、IBM・テスラ決算
10/21 (木) 米 週の新規失業保険申請件数、アメリカン航空・ダウ・AT&T・インテル決算
10/22 (金) 米・欧 製造業・非製造業PMI
商品価格は今週も記録的な上昇となりました。サプライチェーンの問題は向こう数か月で解決するとは思えず、これらはやがて商品価格へと転化し、企業業績を圧迫することもあるでしょう。現在の状況は「インフレのオーバーシュートであり、自然に2%付近に収れんする」というパウエル議長の見立てとの温度差を感じます。
今週発表された消費者物価指数CPIは前年同月比5.4%と前月5.3%から若干の上昇、CPIコアは4%と高止まりといった様相となりました。しかしこれらは前月の数値ですから、先行的には長期金利と期待インフレ率を見るのが今の行動だと思っています。
10年後の期待インフレ率(BEI)は、今週2.56%と今年5月の高値を超え2013年以来の高水準を示しました。5年後期待インフレ率も2.71%とリーマンショック後の最高値水準まであとわずかといったところです。

一方で10年債の利回り(長期金利)は今週1.63を一時マークしました。例えばFRBが10年間全く利上げをしなかったとしたら、利回りを期待して債券を購入した投資家は1.63-2.56=-0.93%とマイナス利回りとなってしまい、実質的に損をしてしまいます。インフレが進行すればするほど、それに見合う長期金利の上昇がなければ債券投資家は投資する意味を失うわけですし、国債が買われなければ国家の財政が悪化し信用度も下がってしまうという経済回復への逆風が吹きます。
特にバイデン政権はインフラ投資を筆頭に大規模な財政出動をしているわけですから、財政赤字問題も将来課題としては重要でしょう。今の長期金利の上昇は景気回復を伴う「良い金利上昇」というよりは、むしろ反対の「悪い金利上昇」に近いのではないかと思います。
しかし別の視点、例えば経済指標の面からはまた違う景色も見えています。
今週発表された決算や経済指標は決して悲観するようなものではなく、米 週の新規失業保険申請件数は29.3万人とコロナショック以来最少を記録しましたし、小売売上高は0.8%と、前月(2.0%)水準までは至らないまでも予想の0.5%を超え、消費行動が悪化している様子もありません。

テーパリングを巡る不透明感はほぼ払しょくされ、11月から開始したとしても向こう10か月相当は緩和が継続されるでしょうから、マーケットへの支援材料が切れたわけではないと考えています。ワクチン接種も確実に進み、3回目接種についても具体化が進んできました。
このように良い材料も悪い材料もそれぞれ存在する中、今の保守的なポートフォリオがたとえ気苦労に終わるとしても、長期投資においては確信が持てない場合は安全側に倒しておくことを優先したほうが良いでしょうし、その材料として来週は決算やガイダンス、商品価格や金利動向を気を抜かずに追いかけようと思います。
実務においてもサプライチェーンの問題は深刻化しています。わたしの仕事場でも資材が確保できないため代替品に切り替えたり、少ない資材で今まで以上の生産を確保する工法を開発するなど、かつて体験したことのない課題の多さに翻弄され、毎日が生産継続との戦いとなっています。こんなことは25年間仕事してきて初めてです。一市民の肌感としてこれが一過性とは思えません。
何か違和感があったときにはポートフォリオは安全側に倒す、それが心の平安となり本業に集中できていると思います。しかしそれに甘んじることなく、謙虚な気持ちで常にニュースを追いかけ、今の自分の判断は正しいか?と問いかけながらマーケットに向き合っていきたいと思っています。・・・今週を振り返り特にそう感じました。
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